ウェブサイト更新中

「アジア保全生態学」のウェブサイトには、メンバーズサイト(非公開)のほかに、日本語と英語の公開サイトがあります。いずれも、Google siteの機能を利用して、無料で作成しています。
日本語の公開サイトは、コチラ→http://sites.google.com/site/asiahozenseitaigaku/
今日の特任スタッフ会議では、公開サイトをどうやって充実させるかについて相談をしました。
「ウェブサイトをどれだけ見てもらえるかは、更新頻度とコンテンツにかかっている」ので、できるだけ頻繁に更新して、コンテンツを充実させていきたいと思います。
ウェブサイトを更新したら、このブログで案内するようにしたいと思います。(矢原)

特別セミナー

今年最初のCOEセミナー(1月7日)は、舘田研究室の取りまとめで、ウプサラ大学(スウェーデン)進化生物学センターのMartin Lascoux博士と、森林総合研究所・森林遺伝学研究領域の津村義彦博士という豪華な顔ぶれでした。

お二方とも、森林樹木種を主な対象として研究されておられます。この日は、Lascoux氏には1)非モデル種における候補遺伝子の探索、と2)種分化と適応について、津村氏には森林総研が取り組む育種法、Genomic selectionについてお話いだたきました。

最近の塩基配列解読技術の発展や、コアレセントモデルの発展に伴い、近年、さまざまな議題へのチャレンジが多く始まっています。Lascoux氏の研究では、今年Heredity1月号に掲載された論文やMolecular Biology and Evolutionに掲載予定の種分化に関する論文の内容をお話いただきました。種は決定的なものでなく、過去も現在も近縁種との遺伝的交流の影響をうけ、遺伝的改変の過程にあることをお話いただきました。しかし現実のデータがこのようなコアレセントモデルの仮定のいくつかを無視しており、解釈には注意が必要だということも議論しました。

Genomic selectionは、形質に関連する遺伝子マーカーの組み合わせ(遺伝子型)を選抜対象にすることで、育種効率を上げようとする考えです。膨大な量の遺伝解析(SNP解析)が必要であり、これまではコスト対効果が低いと考えられてきましたが、次世代、次々世代シークエンサーの登場によって、もはや夢ではなくなってきたようです。津村氏には、森林総研で始まっているスギを対象としてプロジェクトをご紹介いただきました。本COEの舘田研究室もこのプロジェクトに参画しています。

アジア保全生態学COEも遺伝的多様性の観測や遺伝子の保全管理を1つの目標としています。シンポジウムやワークショップの企画が立ち上がっていますので、こちらも随時紹介していきたいと思います。

本年もどうぞ宜しくお願い致します。 
(三村)

森・川・海をむすぶプロジェクト

一泊二日で屋久島に出かけてきました。主目的は、ヤッコソウの種子散布の観察でしたが、今日の午後には一湊川に出かけて、ヤクシマカワゴロモを見てきました。かなり速い流れの中で、沈水状態で花を咲かせているのには驚きました。ユスリカの幼虫と思しき線形の動物がめしべの上で動いていましたが、これが花粉を運んでいるのかどうかは定かではありません。おしべとめしべは離れているので、自家受粉ではないようです。世界でもこの川だけに生息する希少種です。
湊川には、天然アユが棲んでいて、ちょうどいま産卵しているそうです。屋久島のアユは、本土のアユともリュウキュウアユとも違うという話を聞きました。これも面白い素材です。
一湊湾には、すばらしいさんご礁が発達しています。しかし、最近では、ソフトコーラルが消失するなどの異変が生じているそうです。この異変には、陸側からの影響も考えられます。
先日の屋久生物多様性保全協議会で、島の方から一湊湾のさんご礁の現状が紹介され、川・海部会をつくろうという提案がありました。屋久島ではこれまで森しか調べてこなかったので、島の方の提案を支持して、川・海部会をつくろうという結論にしました。
そこで、一湊川をモデルとして、森・川・海をつなぐプロジェクトを考案中です。一湊川は、森林水文学・生態学、河川生態学、沿岸生態学を狭いエリアで関連づけることができる格好のフィールドではないかと思います。(矢原)

生物多様性損失と生態系サービスの変化に関する最新の総説

Mooney et al. 2010. The ecosystem-service chain and the biological diversity crisis. Philosophical Transactions of the Royal Society B, 365:31-39.
DIVERSITAS議長のHal Mooneyによる示唆に富んだ総説です。生物多様性損失の現状や、生物多様性と生態系サービスの関係、生態系サービスと人間社会の福祉との関係に関して、最新の科学的知見を要領よくまとめています。さまざまな生態系サービス間のトレードオフを調整し、最適化するために社会科学的な研究が必要であると主張し、その成果を政策に生かすことの重要性を強調しています。生物多様性損失や生態系サービスに関心がある研究者には、必読文献でしょう。
メンバーズサイトにpdfファイルを置きました。(矢原)