特別セミナー

今年最初のCOEセミナー(1月7日)は、舘田研究室の取りまとめで、ウプサラ大学(スウェーデン)進化生物学センターのMartin Lascoux博士と、森林総合研究所・森林遺伝学研究領域の津村義彦博士という豪華な顔ぶれでした。

お二方とも、森林樹木種を主な対象として研究されておられます。この日は、Lascoux氏には1)非モデル種における候補遺伝子の探索、と2)種分化と適応について、津村氏には森林総研が取り組む育種法、Genomic selectionについてお話いだたきました。

最近の塩基配列解読技術の発展や、コアレセントモデルの発展に伴い、近年、さまざまな議題へのチャレンジが多く始まっています。Lascoux氏の研究では、今年Heredity1月号に掲載された論文やMolecular Biology and Evolutionに掲載予定の種分化に関する論文の内容をお話いただきました。種は決定的なものでなく、過去も現在も近縁種との遺伝的交流の影響をうけ、遺伝的改変の過程にあることをお話いただきました。しかし現実のデータがこのようなコアレセントモデルの仮定のいくつかを無視しており、解釈には注意が必要だということも議論しました。

Genomic selectionは、形質に関連する遺伝子マーカーの組み合わせ(遺伝子型)を選抜対象にすることで、育種効率を上げようとする考えです。膨大な量の遺伝解析(SNP解析)が必要であり、これまではコスト対効果が低いと考えられてきましたが、次世代、次々世代シークエンサーの登場によって、もはや夢ではなくなってきたようです。津村氏には、森林総研で始まっているスギを対象としてプロジェクトをご紹介いただきました。本COEの舘田研究室もこのプロジェクトに参画しています。

アジア保全生態学COEも遺伝的多様性の観測や遺伝子の保全管理を1つの目標としています。シンポジウムやワークショップの企画が立ち上がっていますので、こちらも随時紹介していきたいと思います。

本年もどうぞ宜しくお願い致します。 
(三村)