カブトガニを守ろう!

はじめまして、GCOE特任の西田です。
昨日(2/21)はカブトガニを守る会・福岡支部総会に参加しました。実は支部の事務局を担当しています。昔は本当にたくさんいた(らしい)カブトガニですが、ほぼ全ての生息地において激減・・・いまや絶滅危惧種として環境省レッドリストに掲載されています。博多湾も主要な生息地の一つで、本GCOEコアサイトの一つである今津干潟に産卵地があります。守る会はこのカブトガニ保全を目的に設立された市民ベースの団体です。各地で地道な研究・教育啓蒙活動が行われています。

4〜2億年!もの間、その「形」をほとんど変化させていない「生きた化石カブトガニは、幼生は干潟、成体はすこし沖合の水深〜20m程度の海底、そして産卵は干潟に隣接する砂浜と、実に多様な環境を利用しています。数を減らした原因は、言わずもなが人間です。砂浜や干潟の埋め立て、沿岸道路・コンクリート護岸の建設による産卵地および幼生の生息場所の消失、コンクリートの材料となる海砂採取は成体の生息地を破壊している可能性があります。またダムの建設による河川水量の低下は、干潟や砂浜を造り・維持するために必要な土砂の供給不足をまねいています。カブトガニを守ることは=干潟を中心とする生態系を守ることにつながると言えます。

実は、カブトガニ、日本以外にもアジアに3種類(日本にもいるカブトガニ、そしてミナミカブトガニとマルオカブトガニ)、アメリ東海岸に1種(アメリカブトガニ)が生息して、いずれも個体数を減らしています。今年6月には第2回国際カブトガニシンポジウムが香港(香港にもいます!)で開催される予定です。このブログでもちょくちょくカブトガニを取り上げて行きたいと思います。カブトガニに興味を持たれた方は、西田までご連絡を! (西田)

bioGENESIS国際プロジェクトオフィス(矢原)

三村さんは、パリのDIVERSITAS本部を滞在中です。今日は、三村さん、DIVERSITAS事務局員のAnne-Heleneさん、オーストラリア博物館のDan Faithさんと午後6時から、電話会議をしました。Teleconというシステムを使うと、複数の通話者が同時に会話できるのです。しかし、音が割れてなかなか聞きづらい。8時まで2時間にわたり、割れた音の英語を聞いて会議をするのは、なかなか大変でした。
会議の内容は、bioGENESIS国際プロジェクトオフィスに関することです。DIVERSITASのbioGENESIS国際プロジェクトオフィスを九大で引き受けることになりました。三村さんは、プロジェクトオフィスのスタッフを引き受けてくださいました。そこで今回の渡仏となったわけです。国際プロジェクトの運営は大変な面もありますが、世界の第一線で指導的な立場にある研究者と日常的に連絡をとりあいながら仕事をするのは、It's fun!
三村さんは、そのあとパリ第11大学のPaul Leadleyの研究室に移動。そこで、夜10時から、またしても電話会議。三村さん、ご苦労さま。Please enjoy staying in Paris!

ボトムアップとトップダウン:分野間連携の進め方(矢原)

九大・東大合同シンポ、国際シンポの準備・運営、ご苦労様でした。参加者の感想はどうだったのでしょうか。せめて講演者には、アンケートで感想と今後への意見を聞いてはどうかと思います。
シンポ期間中の討論を通じて、いろいろなことをやっているが全体が見えないという意見を聞きました。私は、トップダウンでリーダーが強力にひっぱるというやり方をあまり好まないので、しばしばこのような印象を与えてしまうのだと思います。
学際的なプロジェクトを成功させるには、ボトムアップ的アプローチとトップダウン的アプローチをうまく組みあわせることが大事だと考えています。4つのコアサイトで、今年一年を通じてボトムアップ的アプローチを進めれば、自ずから具体的な統合の方向性が浮かびあがるでしょう。太湖に流れるチャオシー川では、水質・魚・水草を同時に調査することで、これらの関連が見えてきました。カンボジアの森林では、現存量評価や水文学的観測と、種の多様性調査を同時に進めることで、生態系レベルと種・遺伝子レベルをつなぐ研究ができそうです。
このようなボトムアップ的アプローチの一方で、トップダウン的に共通の目標・プロトコルを設定して、協力して研究を進めることも、もちろん重要です。「アジア保全生態学」の場合、系統樹を利用した遺伝学的な多様性評価が、共通の目標になりそうです。この点では、基調講演で紹介した哺乳類の論文(下記)が、とても参考になると思います。

  • Davies JT et al. 2008. Phylogenetic trees and the future of mammalian conservation. PNAS 105:11556-11563.

この仕事は、世界地図上で、種数の多様性、系統的多様性だけでなく、体の大きさの分散という、形質の多様性を評価している点が、とても良いと思います。このように、遺伝的なアプローチと形質の多様性の研究を組み合わせていくことは、地球規模での環境変化に対する生物の反応を予測するうえでも、また地球規模での生態系や生物進化の基礎研究のうえでも、とても大事だと考えています。この研究プロジェクトのリーダーであるAndy Purvisとは旧知の仲なので、いちど九大に来てもらって、連携をはかりたいですね。なお、関連する以下の論文がScience誌に発表されています。

  • Schipper J et al. 2008. The status of the world's land and marine mammals: diversity, threat and knowledge. Science 322: 225-230.

ホームページ ベータ版 完成

アジア保全生態学の公開ホームページを完全リニューアルしました。

http://conservationecology.asia

とりあえずベータ版ですが、どんどん更新してください。
無料のGoogleサイトでここまでデザインできるとは、、、驚きです。
クラウドコンピューティングがはやるのも当然ですね。
ほんの5年前は苦労して手打ちHTMLだったのに。CSSの設定とかもしなくていいのでとっても楽です。ただしiframeとかjavascriptを埋め込めないのが残念。いずれできるようになるのでしょうか。
ついハマってしまい、楽しくていつのまにか土日つぶしてしまいました・・・・
調子乗ってドメインまでとってしまいましたが、「asia」というトップレベルドメインがあったので「conservationecology.asia」となり冗長がまったくないので、けっこうステキだと思います。

以下は技術的な情報
・編集モードでエラーが出たときに「保存」するとオールクリアでページの情報がすべて消えます。キャンセルで回避しましょう。
http://conservationecology.asiaでアクセスすると、ログイン状態からいったん離れますが、下のログインをクリックするとパスワードなしで入れます。
・トップページのスライドショーはPICASAを使っています。トピックごとにアルバムを作って挿入すれば、情報量も多く見た目も華やかになると思います。
・XXXX@conservationecology.asiaのメールアドレスがほしい人はkanoまで連絡ください。

屋久島でのヤッコソウ調査

はじめまして、GCOE特任助教川口利奈です。

このブログでは、アジア保全生態学GCOEの活動の一部である調査や実習の様子もご紹介する予定です。そこで、今回は本GCOEプログラムのコアサイトの1つである屋久島でおこなっている調査の一例に触れたいと思います。

私は九州大学理学部生態科学研究室の院生の方々と協力して、屋久島でヤッコソウという植物の繁殖生態を調査しています。ヤッコソウ(Mitrastema yamamotoi)はヤッコソウ科ヤッコソウ属の全寄生植物で、シイ類の根に寄生します。その分布域はパプアニューギニアから東南アジア、そして日本に広がっています。日本では徳島県が分布の北限で、高知や宮崎、鹿児島、沖縄などにも生息地があります。

自生地が国や県の天然記念物に指定されるなど、ヤッコソウが希少種として認知されている他地域に比べ、屋久島におけるヤッコソウの生育密度は非常に高く、低標高の照葉樹林の林床にしばしば大集団が見られます。ヤッコソウ(奴草)の名前は、開花期の特異的な形態(写真参照)を「奴」に例えたものです。11月、照葉樹林内のスダジイの根本に、背丈4cmほどの小さな奴たちが姿を現します。奴の腕に当たる鱗片葉の中には多量(数百μl)の蜜がたまります。開花した花ははじめ雄の状態で、帯状の葯から花粉を出します。やがて筒状の雄しべがすっぽりと抜け落ち、雌しべが現れます。この独特の花の形態は、ヤッコソウの送粉(花粉の受け渡し)と種子散布にどのように役立っているのでしょう。

【開花期のヤッコソウ。中央に写っているのが雌期の花で、その左右が雄期の花。手前の地面に落ちているのが抜け落ちた雄しべ。】


私たちヤッコソウ研究班は、昨年11月から誰がヤッコソウの花粉や種子を運んでいるのかを特定する調査を始めています。この時期、屋久島ではヤッコソウの種子散布が終わろうとしていますが、来シーズン以降も詳細な調査を継続して、ヤッコソウの繁殖生態の解明を目指します。豊かな森とそこに住む動物たちに支えられたヤッコソウの生活史を明らかにすることで、多くの人々にわかりやすく屋久島の自然の価値を印象づけられる素材を提供できると考えてます。

ヤッコソウの蜜を目当てにどんな動物たちがやってくるかについては、またの機会にご報告します。
お楽しみに。

(川口)